09.2012
復刊『無惨絵 新英名二十八衆句』 血の浮世絵が現代に蘇る意義

凄いニュースが飛び込んできました!
なんとリブロポートが出していた『江戸昭和競作 無惨絵―英名二十八衆句』
が復刊するそうです。
絶版になって久しく、古書価格も高騰していた、ジャパニーズ・スプラッタの金字塔。
江戸期の月岡芳年と落合芳幾。
昭和期の花輪和一と丸尾末廣。
この新旧4名の作家による“血で編んだ画集”が、書名を『無惨絵 新英名二十八衆句』
と改め、ついに7月下旬にエンターブレインから発刊されます。
体裁は特別仕様のポスター・ブック。
復刊を望む声が多いことは知っていましたが、あまりの内容から不可能だと思い込んでいました……。
当研究所の記事『無惨絵・無残絵 日本文化の裏地を染める鮮血』ギリシア悲劇との類似性でも、本書について軽く触れています。



左:丸尾末廣『新英名二十八衆句:フリッツ・ハールマン』
中央:花輪和一『新英名二十八衆句:都井睦雄』
右:丸尾末廣『新英名二十八衆句:一柳展也』
リブロポート版の発刊は1988年。
その直後にバブル崩壊。
失われた10年を経て、9.11の同時多発テロ、イラク戦争。
経済界では、インターネットの爆発的な普及によって、幕末の再来と騒がれる。
そして今の状況。
現代は、まったくもって乱世です。
こうした時代の共通性が、あの鮮血を蘇らせたに違いありません。
本書に寄せた荒俣宏先生の賛辞を思い出します。
「これらの絵は単なる猟奇ではないのだ。猟奇の極みに到達することで俗世の浄化を寿(ことほ)ごうという、すぐれて清明なる神事(かみごと)にほかならない」

グロテスクなものが少しでもダメな人は、お控えください。
予想を超えて“赤い”です(笑)
いろんなものが飛び散っています。
あの芥川龍之介さえも、愛蔵していた芳年・芳幾の血みどろ絵を、悲惨さに耐えきれず晩年手放したと言われているほど。
昭和版が加わり、無惨は倍増。
充分ご注意ください。
表現規制が強まっている現在、本書が刊行される意義は少なくありません。
復刊リクエストが出されたのが2000年。
10年以上にわたって本書の復刊に取り組んだ復刊ドットコム並びに関係者の方には、心からの敬意を表します。
これを期に、神事としての残酷性について、民俗学・宗教学からのアプローチも行っていきます。
次回をお楽しみに!
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Comment
残酷絵は苦手ですが、芳年の絵はすばらしいです。
月岡芳年は妖怪絵でも知られていますよね。
『新形三十六怪撰』で描かれている女性は妖艶で美しいです。
話がそれました。
乱世ですよね、同感です。
今この荒苦しい世の中に生贄の血を…ということでしょうか。
時代が変わっても、人間というものはやはり変わらない部分があるなと思います。
怖いけど、
お話の続きが楽しみです。
月岡芳年は妖怪絵でも知られていますよね。
『新形三十六怪撰』で描かれている女性は妖艶で美しいです。
話がそれました。
乱世ですよね、同感です。
今この荒苦しい世の中に生贄の血を…ということでしょうか。
時代が変わっても、人間というものはやはり変わらない部分があるなと思います。
怖いけど、
お話の続きが楽しみです。
髪結ひ辰乃さん
> 『新形三十六怪撰』で描かれている女性は妖艶で美しいです。
たしかに妖艶という言葉がぴったりですね。
芳年の作品を見ると、現代のマンガの基礎さえも築いているような気がします。
> 時代が変わっても、人間というものはやはり変わらない部分があるなと思います。
本当にその通りですね。
私たちが眼を背けようとしているものこそ、本当に見なければならないものに思えてなりません。
次回の記事は相当過激な内容になるかと思われますので、ぜひ夏の暑さを吹き飛ばしてください(笑)
内容的にも、かなり重要なものになります。
どうぞお楽しみに!
> 『新形三十六怪撰』で描かれている女性は妖艶で美しいです。
たしかに妖艶という言葉がぴったりですね。
芳年の作品を見ると、現代のマンガの基礎さえも築いているような気がします。
> 時代が変わっても、人間というものはやはり変わらない部分があるなと思います。
本当にその通りですね。
私たちが眼を背けようとしているものこそ、本当に見なければならないものに思えてなりません。
次回の記事は相当過激な内容になるかと思われますので、ぜひ夏の暑さを吹き飛ばしてください(笑)
内容的にも、かなり重要なものになります。
どうぞお楽しみに!