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15.2012

『北京故宮博物院200選』 中国文化を紐解く鍵・陰陽五行説

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北京故宮博物院200選

上野の東京国立博物館で開催されている北京故宮博物院200選に行ってきました。
200点ある作品のうち約半数が一級文物(日本で言う国宝)という完全に国家の威信をかけた展覧会でした。
近年の中国関連の展覧会では、規模・質ともに今回が最大と言えるかもしれません。
土曜日に行ったのですが、非常に混んでいて、中国の方の姿も多く見られました。
それにしても今年の東博の企画展からは、来月の「ボストン美術館 日本美術の至宝」も含め、もの凄い意気込みを感じます。

[一級文物] 草書諸上座帖巻(そうしょしょじょうざじょうかん)(部分)
一級文物 『草書諸上座帖巻(そうしょしょじょうざじょうかん)』(部分)

[一級文物] 魯大司徒鋪(ろだいしとほ)
一級文物 『魯大司徒鋪(ろだいしとほ)』

明黄色彩雲金龍文緙絲朝袍(めいこうしょくさいうんきんりゅうもんこくしちょうほう)
明黄色彩雲金龍文緙絲朝袍(めいこうしょくさいうんきんりゅうもんこくしちょうほう)

やはり作品が素晴らしい。
一点一点に中国の歴史・思想・文化が凝縮されています。
たとえば上記の皇帝が着る袍もそのひとつです。
「方位神の龍」は皇帝の象徴。
雲間に浮かぶ龍と、それを囲うように縁どられた海の浪が、天地を統べていることを表しています。
「黄色」は陰陽五行のうち「五方位の中央」をあらわしているため、皇帝の色とされています。
このように黄色という色ひとつとっても、ミクロとマクロが照応する独自の思想を持っているのです。
これを「陰陽五行説」と呼びます。

[一級文物] 乾隆帝大閲像軸(けんりゅうていだいえつぞうじく)
一級文物『乾隆帝大閲像軸(けんりゅうていだいえつぞうじく)』

中国の文化を紐解くには、「陰陽五行説」の知識は必須です。
「陰陽五行説」はただの哲学に留まらず、衣食住すべてに関わる根幹的な思想であり、政治・経済・医学などもこの思想に基いて実行されてきました。
これほど長い歴史を持ち、緻密に整備され、森羅万象を包含するような思想で、「陰陽五行説」以上のものを私は知りません。

今回の展示では中国が多くの国に影響を与えていることだけでなく、逆に他国の影響も豊富に受けていることを知る良い機会にもなりました。

[一級文物]《琺瑯蓮唐草文龍耳瓶》(ほうろうはすからくさもんりゅうじへい)
一級文物 『琺瑯蓮唐草文龍耳瓶》(ほうろうはすからくさもんりゅうじへい)』

大威徳金剛(ヤマーンタカ)立像(だいいとくこんごうりゅうぞう)
大威徳金剛(ヤマーンタカ)立像(だいいとくこんごうりゅうぞう)

ひとつだけ違和感があったのが、会場1ブロックも使ってチベット関連の物品が展示されていることです。
ここにある種の政治的意図を見るのは穿った見方でしょうか。
チベットが中国の一部であることをアピールしているように見えてならないのです。
芸術が政治と癒着するのは珍しいことではなく、国家のプロパガンダとして芸術が多大な影響を与えることは歴史が証明していますが、他の文物が素晴らしいだけに違和感は拭いきれません。
多民族構成による軋轢や混沌も、中国の歴史を知る上で無視できない一側面です。
その意味でも本展覧会は、美術工芸を通して中国を知る最高の催しと言えるでしょう。



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