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12.2011

エクフラシスとは

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アキレス_盾_ホメロス
ホメロスが『イーリアス』で精緻にエクフラシスしたアキレスの盾を再現したもの。

エクフラシス(エクフラーシス,ekphrasis)とは、ギリシア語源で「はっきりと述べる」という意味があり、修辞学という弁論・叙述の技術に関する学問分野の一概念として、その歴史は古代末期にまで遡ることができる。

もともとは神々や英雄、偉人を讃えるために、その容貌や特質を描き出していたが、やがて人物のみならず絵画や彫刻などの美術品、建築や風景などを詳細精緻に描写する方向へと発展していった。

当研究所ではエクフラシスを「視覚表象の言語表象」と定義し、当定義に包含される文章は散文/韻文、古代/近現代問わず同一の概念とする。
すこし難しい言い方に聞こえるが、視覚的なものを言葉で描写する、という程度にとらえていただきたい。つまり画像筆記(エクフラシス)だ。
現代では芸術作品の自律性・純粋性というものが声高に叫ばれ、そこに言葉を付加することは「無粋」であるかのようにみなされることも少なくないが、古代ギリシアの抒情詩人シモニデスの「詩は物語る絵、絵は沈黙の詩」という警句にあるように、言語と他芸術(主に視覚分野)は、元来密接な関連性を持つと考えられてきた。

エクフラシスは「現実的エクフラシス」と「観念的エクフラシス」の二つに分けられる。
現実に存在する美術品等を描いた文章と、架空の美術品等が描かれたものだ。
実は古典の中では観念的エクフラシスが主流だったのだが、けっしてファンタジーに偏ることなく、本当にその美術品が目の前に存在するかのように描かれている。
当研究所では、現実的エクフラシスと観念的エクフラシスを分類せず、「エクフラシス」で統一する。

エクフラシスは物語り・叙述(narratio)という文章独自の時間芸術的な要素を加えつつも、あくまで対象をリアルに、まるで現前するかのように描写するのが本分であり、この技術を獲得することは絵画のデッサンと通じる。

デッサンは描けば描くほど上達するものだ。近代文学の巨匠、谷崎潤一郎はこう述べている
「文章の要は何かと云えば、自分の心の中にあること、自分の言いたいと思うことを、出来るだけその通りに、かつ明瞭に伝えることにある」

エクフラシスは、自分の心や物事をあらゆる角度から把握し、それを的確に表現するための、もっとも優れた訓練になるだろう。

今後機会があるごとに古今東西のエクフラシスの事例を載せていく。



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